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手縫いの嘘

手縫いとミシン縫いの違い。

結論としては、どちらも長短あり、優劣をつける必要はないと思われます。

必要に応じて使い分ければ良いだけの話し。

手縫いの方が丈夫は大嘘

「手縫いの方が丈夫」と言っている人がいます。

その人に直接聞いたことはなく、想像の域を出ませんが、「手縫いの方が丈夫」と言っている方は、ミシンを使ったことがない、またはミシンを上手に使えない人、または巧妙に人をダマそうという人である可能性が高いと思われます。

彼らの説明および、彼らがよく使う例の図には大きな嘘がいくつも隠されています。

革業界、まだまだ嘘が多いようです。

騙されないようにしたいところです。

half completeは法令等の遵守をはじめとして、法令等が未整備なものについても、人としてこうありたい、こうあるべき、ということでやっています。

half completeには嘘、騙し、優良誤認への誘導、パクリといったようなものは一切ありません。

half completeは正直ベースでやっています。

なお、half completeはミシン縫いも手縫いも行います。

手縫いの長所

手縫いの長所は次のとおりと思われます。

  • 一生懸命縫いました、という効果はある。
  • 交互に縫う縫い方をしている場合は、糸が抜けにくいという見方も出来る。
  • 細かい箇所まで縫える。
  • 表、裏共に糸目が揃いやすい(ただし穴目をきちんと表裏揃え、上手に縫えれば)。

といったところ。

さて、手縫いに短所はないのでしょうか?

手縫いの短所(その1)

糸締りが悪い

「えっ?手縫いって糸締まりがいいんじゃ?」 こう思っている方は、見事に例の図と説明にダマされています。

手縫いでは実はどの目もとまっていません。

始めと終わりがロウ留めであれば、始めと終わりですらとまっていません。

ただ穴を通っているだけです。

手縫いは穴と糸との圧力でしかとまっていません。

これが手縫いの糸締りが悪い原因です。

ミシン縫いは構造上、上糸が下糸を一目一目引っ張る構造となっているため、簡易的ではありますが一目一目とまっている形になっています

このため、ミシン縫いは手縫いより糸締りが良い。

糸締りの強弱のイメージ

卑近な例で言うと、ダンボールの縛り方になぞらえることが出来るかも知れません。

ダンボールをまとめて縛るときに、ヒモをぐるぐる回すだけでは全体は締まりません。

締めて縛るには、ヒモを端部分にて一旦締めてとめることによって全体をキッチリ締めることが出来ます。

ダンボールの回りをヒモをグルグル回すだけ、が手縫いに近いようです。

ヒモをよじって締めて縛っているのがミシン縫いに近いようです。

他の例で話しをすると必ずしも細かいところまで合っていないので、何かと問題ではありますが、物を縛る場合は、一目一目留めないと、締りが悪くなり、これは手縫いと同様の状態となります。

革の話しに戻ります。

接着剤を使わない状態でやってみると一目瞭然ですが、手縫いでは糸締まりが悪いため、極端な言い方をすると革が浮いた状態になってしまいます。

接着剤を使わない状態では、手縫いでは相当ギシギシ縫わないと締めの効果はないようです。

ギシギシ縫うのは革によろしくありません。

また、相当ギシギシ縫ったところで、あまり効果はないようです。

手縫いの構造上、それは仕方がありません。

ミシン縫いでは接着剤を使わなくても、糸締りが良いので、革が浮いた状態にはなりません。

手縫いは糸締まりが悪いので、特にファスナー回りの手縫いは最悪となります。

縫い返しなどでも最悪です。

手縫いは所詮、飾り縫いにしか使えないのかも知れません。

手縫いの短所(その2)

一目一目縒りが緩む

ミシン縫いとは違い、手縫いでは張力を保ち続けながら縫うことが出来ません。

一目一目緩む、締め直す、の繰り返しになります。

このため、一目一目縫う度に糸の縒りがほどける力が働きます。

穴を通った状態では繊維が引っ張られた状態であるため、糸の縒りが緩んでいるようには見えませんが、穴を通し、折り返す際に、縒りは緩む力が働いています。

手縫いの人の嘘の主張

ミシン縫いでは下糸が切れちゃうと全部スルスルって抜けちゃうんでしょ?

手縫いの方が丈夫という方の宣伝に良くある文句ですね。

確かに、ミシン縫いの構造としてはそういう構造ではあります。

ただし、『そんな下手なミシン縫いはいない』のが現状でしょう。

ミシンを使うということはミシンを調整するということとなります。

ミシン縫いにおいて、下糸が大きく浮いてしまい、下糸が切れたときに簡単に抜けてしまうような縫い方はしません。

それはあたかも手縫いにおいて、糸が浮いた状態で縫われている、のと同様の状態です。

そんな手縫いの人はいないと思われます。

上手な手縫いと上手なミシンを比較しなければなりません。

上手なミシンでは上糸と下糸の交差は穴の中に隠れ、上糸が裏側に出ることはないようです。

そして、上手にミシン縫いされていれば、万一糸が切れた場合でも、下糸を思い切り引っ張ったところで3、4目ほどしかほどけはしません。

全てするっと抜けてしまうようなことはありません。

一目一目止まっていない手縫いの方が、万一糸が切れた場合に、周辺の弛み、修理のしやすさという点で質が悪いようです。

糸の太さ

さて、その切れると言っているミシンの下糸は何番手のことでしょうか?

手縫いの00番手(とても太い)と、ミシン縫いの20番手(細い)を比べているのではないのでしょうか?

ハイブランドなどでは平気で20番、30番といった細い糸を使い、40番じゃないかなどという細い糸も使っています。

綿糸だったりもします。

それでは切れます。

ハイブランドの作りは弱いです。

それは明らかです。

いわゆるアパレル作り(half complete造語)です。

さて、手縫いの人の使っている糸は何番でしょうか。

00番、0番、1番、5番ではないでしょうか。

8番を使う人はいるでしょうか?

そして、ミシンで切れるとしている下糸は、

まさか20番とかの細い糸のことではないでしょうね?

まさか手縫いの00番手とミシン縫いの20番手を比べてはいないでしょうね?

糸の番手と太さは次のとおりです。

00番: 0.6ミリ厚程度

0番: 0.5ミリ厚程度

1番: 0.4ミリ厚程度

5番: 0.3ミリ厚程度

8番: 0.2ミリ厚程度

20番: 0.15ミリ厚程度

30番: 0.125ミリ厚程度

40番: 0.1ミリ厚程度

(出典: half completeによるビニモ及びビニモMBTの実測値)

太い糸(00番手は0.6mm厚程度)と細い糸(20番手は0.15mm程度)を比べていた場合、それを隠し、太い糸で縫われている方が丈夫、というのは

明らかに大嘘

です。

それは手縫いかミシン縫いかではなく、糸の違いに他なりません。

ちなみに、ミシン縫いの下糸が手縫い同様の番手の太さだった場合、その糸は切れるでしょうか?

00番 切れない

0番 切れない

1番 切れない

5番 切れない

8番 切れない

はずです。

手縫いの00、0、1、5、8番糸は切れるでしょうか?

リンゴはリンゴと比べないと、優良誤認への誘導となります(景品表示法違反)。

下糸の番手

下糸に20番を使うことはhalf completeではありえません。

「上糸8番、下糸20番なら綺麗に縫えるよ」などというミシン屋さんもいるようですが、half completeではそれはありえません。

20番ではナイロン糸でも切れます。

一般的なお財布が壊れやすいのは糸が弱いから(そのお財布が切れやすい構造ということもありますが)。

half completeは基本的には上糸8番(以上)、下糸8番(以上)で縫います。

まず切れることはありません。

手縫いの宣伝は嘘が多く、比較対象がかなりいい加減で、手縫いの方が有利であるとする為に相当無理な説明がされています。

はっきり言って大嘘です。

ダマされないようにしたいものです。

太い糸は重い

太い糸は当然重いです。

太い糸を通す為の穴は大きくなります。

それは素材を傷めます。

大きな穴は、強度を下げます。

果たして、手縫いは丈夫でしょうか?

飾り縫い

half completeでは飾り縫いは愚の骨頂と考えています。

一枚革のベルトの外周の縫いはまぁ無駄としか思えません。

手縫いは、糸締まりが悪く、正直なところ、手縫いは飾り縫いの域を出ていない、と考えています。

飾り縫いであけた穴は強度を下げます。

糸ほどけの実験

手縫いとミシン縫いの糸ほどけの実験をしてみました。

実験方法

  • 2枚の革を接着した状態で、端から縫う。
  • 縫われたところを切断してみる
  • 切断したところから革を強引に剥がし、糸目が外れる状態を確認してみる

手縫い、ミシン縫い共、3目ほどで外れます。

強度という面で手縫いが強いということはないようです。

手縫いの短所(その3)

手縫いの最大の短所は、糸が穴を何回も通り、摩耗する、ことでしょう。

例えば30cmを縫うとします。

糸目の穴の間隔は3mmとします。

30cmは300mm。

300mmの間に3mm間隔であると、穴は100個ある計算になります。

ミシン縫いでは縫われる箇所の糸が縫われる箇所の穴を通るのは1回という言い方で良いかと思われます。

ミシン縫いではテンションが保たれたまま糸の出し入れが行われるため、糸の縒りがほどける力が働くことはありません。

手縫いにおいては30cmの最後の方の穴を縫う為の糸は、革に開いた穴を100回通過した状態の糸となります。

革の穴を100回通過した糸の状態はどのようなものでしょうか。

最近は麻糸ではなく、手縫いにもナイロン糸を使う場合が多いと思われますが、たとえナイロン糸であっても100回穴を通った糸が1回穴を通った糸より磨耗していないということはあり得ないでしょう。

手縫いにおいて、縫い終わりの糸の状態が磨耗しておらず、縫い始まりと同じ状態であることは有り得ません。

手縫いで30cm縫った場合、縫い終わりの糸は革の穴を100回通っています。

60cm縫うと縫い終わりの糸は革の穴を200回通っています。

以下同様に倍々に摩耗します。

その回数分ミシン縫いより糸は摩耗していることになります。

当然、一目通そうとする毎に糸が緩み、糸の撚りがほどける力が働くため、摩耗の度合いは大きくなります。

手縫いおよびミシン縫いの短所(その4)

手縫いの場合の短所になりうるところとして、穴を開ける際に菱切りを使うこと、縫い研ぎ針を使うこと、があります。

ミシン縫いの短所としても研ぎ針(菱切りと同様のもの)を使うことが短所となる可能性があります。

half completeは縫うこと自体は素材を弱めることと考えています。

特に菱切り、研ぎ針共に革の繊維を切ってしまうと認識しています。

手縫いの場合、菱切りではない穴あけを使っているのであれば問題ないと思われますが、菱切りを使っている場合は繊維を切っていることになります。

研ぎ針の場合も同様です。

half completeのミシン縫い

研ぎ針の方が縫い目は綺麗とされますが、half completeは繊維を切る要素を減らす為、丸針を使います。

総合送りミシン

総合送りミシンは、針でも革を送ります。

このため、同じ針を使っても、上下送りミシンより針穴が大きく広がってしまいます。

穴が大きすぎて美しくないため、half completeでは総合送りミシンではなく、上下送りミシンを使っています。

総合送りミシンで研ぎ針なんか使っちゃったら、もう大変です。

思いっきり革を切っていることになります。

ちなみに、総合送りミシンで作られたものは一目でわかります。

穴が大変大きいので。

あーあー、総合送りだな、と思います。

必要以上に細目の針で穴目を大きくせず、太めの糸で広がってしまう穴を隠す、という調整が必要になってしまいます。

それでも穴の回りが切られていて強度が低いことには変わりがないようです。

手縫いに対してのミシン縫いの最大の長所

速いことですね。

特に直線をずーっと縫うようなものは手縫いではやりたくありません。

ミシン縫いって革に傷が付いちゃうんでしょ?

これも多分ミシンを使ったことのない人の言ですね。

確かに、ミシンは革を金具が押さえて進んで行くので、完全に傷がつかないということにはなりません。

しかしながら、ミシンの押さえや圧を変えたりしながら縫うため、目立った形での傷は付かないと認識しています。

「ミシンで縫ったのになんで傷ついていないんですか?」と言われたりもするので、「ミシン縫いは革に傷が付く」という手縫いの変な嘘に近い宣伝?がまかり通ってしまっているようです。

また、手縫いの方が丈夫、のミシンの写真の押さえの歯には、ものすごくギザギザなものが載っていますが、これも 大嘘のポイント

です。

まぁ、あの抑えを使っている人もいるでしょうが、あれで傷がつくのは当たり前の話です。

それは、手縫いでポニーを使った場合に、ポニー内側が鉄で出来ていて、しかもギザギザになっているようなものです。

または、指に鉄のギザギザが付いているようなものです。

そんな手縫いの人はいないでしょう。

あんなギザギザではなく、平滑に近い金属や柔らかい素材の送り歯を使うのがミシン縫いでは普通であるはずで、half completeでもそれが当然で普通のことです。

まとめ

まとめると次のようになります。

手縫い ミシン縫い
糸抜け しづらい しづらい
糸締り 良いとは言えない 良い
糸の劣化 多い (少)ない
表と裏の縫い目 違いはない(ただし穴の開け方と縫い方による) 違いはそれなりに出る
速度 遅い 非常に速い
縫える箇所 手が届く範囲 狭いところは有利 ミシンが届く範囲 ポストミシンもあるので、縫える範囲としてはミシンの方が優位。 ただし、直径7、8cm程度のミシンの腕を通せる必要がある。
傷つきの有無 ほぼない 少々ある
革を切りながら縫う可能性 菱切り、研ぎ針を使う場合は可能性大 研ぎ針を使う場合は可能性大。 丸針を使う場合は可能性小。
穴の大きさ 大きい。素材を傷める。 小さい。
重量 太い糸は重い。 太い糸では重いが、太い糸を使う場面は少ない。

といったところです。

half completeは基本ミシンで、どうしても縫えない構造になってしまった場合、必要に応じて手縫い、という考え方です。

ミシンで全て縫えるよう(手縫いにならないよう)に構造を考えて作ってはいます。

手縫いは糸締まりが悪いので、基本的に使いたくありません。 half completeは、縫うこと自体は形を作る上では有効だが、縫うこと自体で強くなるわけではなく、縫うことはむしろ素材を弱めると考えています。

なるべく縫わない構造になるよう製品開発しています。 革業界、まだまだ嘘が多いようです。

ダマされないようにしたいところ。

なお、half completeでは嘘、騙し、パクリといったようなことは一切ありません。 手縫いには良いところも沢山あるのに、嘘の宣伝で台無しです。

そんな大嘘、つかなくても良いのになぁ。

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